高圧電線のなにが問題なの?
電磁波と健康影響との関係に不確かな部分がある
国際機関が発がん性を指摘しており、統計では小児白血病など関連があるとみられています。
“小児白血病の症例が少ないためはっきりとした強い因果関係とみなすには不十分”というあいまいな位置づけであることは重要です。
経産省も「研究を推進すべきである」とする見解を表しています。
経済産業省の見解
経済産業省原子力安全・保安院では、電力設備から発生する磁界に関する規制のあり方を検討するために、2007年度に原子力安全・保安部会電力安全小委員会に、電気・電磁波分野及び医学・生物学分野の専門家、電気事業連合会、消費者代表及びマスメディア等12名の委員からなる電力設備電磁界対策ワーキンググループを設置しました。
そして、2007年6月に世界保健機関(WHO)が発表した環境保健基準(クライテリア)No.238およびファクトシートNo.322の見解を受けて、以下のような見解を発表しました。
経済産業省の見解
- 強い電磁波が人の神経や筋肉に与える刺激の作用を防ぐために、国際的なガイドライン[83.3マイクロテスラ(60ヘルツ)、100マイクロテスラ(50ヘルツ)]を採用すべきである。
- 電磁波と健康影響との関係に不確かな部分も残っているため、この不確かさを低減するために産学官が協力して研究を推進すべきである。
- 電力会社は正確な情報を国民に提供する一層の努力をすべきであり、電力設備設置時のリスクコミュニケーション活動が重要である。
- 送電線などの電力設備は、結果的に電磁波を低減する対策が講じられているため、かなり低い磁界レベルであるが、今後も可能な範囲でその取組みの継続を推奨する。
WHOと各国の規制値に、世界中の科学者から見直しの声が上がった
日本では電磁界の健康への影響を調べる疫学研究が少なく、論文も少なく、今ある情報は電力会社が発信しているものが大半を占めており、日本語で検索すると広い視点での情報はなかなか得にくくなっているように見えます。英語で“electromagnetic field influence”などのキーワードで検索すると様々な情報を閲覧しやすくなります。
また、電磁界情報センターのサイトも定期的に更新されています。
科学者団体から見直しを求められているWHOの見解とは
規制が甘すぎると指摘されているWHOの見解とはどのようなものでしょうか。
上記の国際科学者グループは、最近の幾多の科学論文から判断すると、WHOや国連各国の規制は健康影響のリスクから人々を守るためにはこれまでの結論では不十分であると指摘しています。
WHOファクトシート No.263 2001 年 10 月
2001 年 6 月、IARC の科学専門家作業部会は静的及び超低周波の電界、磁界に関して評価作業を行いました。ヒト、動物及び実験的な証拠に重み付けして評価する標準的な IARC の分類基準を用い、超低周波磁界は、小児白血病に関する疫学研究結果に基づき、ヒトに対して発がん性がある可能性がある;Possibly carcinogenic to humans と分類されました。疫学研究に関する二つの最近のプール分析が疫学的証拠に関する洞察をもたらし、これらは IARC の評価の極めて重要な役割を演じました。これらの研究では、平均磁界曝露が 0.3 から 0.4μT を超える住民では、それ以下の曝露下にある住民に対して子供の白血病の発症が2倍になるかもしれないことを示唆しています。
英国では最近、非電離放射線諮問部会が、英国放射線防護局(NRPB)に商用周波電磁界とがんのリスクについての報告を行いました(AGNIR, 2001)。ここでは、現在の証拠は、電磁界が子供に小児白血病をもたらすという確固たる結論を正当化するほど十分に強いものではないとした上で、強い磁界への長期の曝露が子供の白血病リスクを増加させる可能性は残るとしています。さらに、彼らは、研究の推奨も行いました。オランダ政府の主要な科学的諮問機関であるオランダの保健審議会も同様な結論に達しています。
短期的影響潜在的な長期的影響
WHOファクトシート No.322 2007 年 6 月
高レベル(100 µT よりも遥かに高い)での急性曝露による生物学的影響は確立されており、これは認知されている生物物理学的なメカニズムによって説明されています。外部の ELF磁界は身体内に電界及び電流を生じ、非常に高い強度では、神経及び筋肉が刺激されたり、中枢神経系の神経細胞の興奮性が変化したりします。
ELF 磁界曝露による長期的なリスクを調べた科学的研究の多くは、小児白血病に焦点を当ててきました。2002 年、IARC は ELF 磁界を「ヒトに対して発がん性があるかもしれない」と分類したモノグラフを公表しました。この分類は、ヒトにおける発がん性の証拠が限定的であり、実験動物における発がん性の証拠が十分ではない因子を表わすのに用いられます。この分類は、疫学研究のプール分析に基づいています。プール分析では、居住環境での 0.3~0.4 µT を越える商用周波磁界への平均曝露に関連して小児白血病が倍増するという、一貫したパターンが示されています。タスクグループは、その後に追加された研究は、この分類を変更するものではないと結論付けました。
電磁波についての冊子が、母子手帳と一緒に全国配布されている
冊子の中では、日常の範囲内では電磁界を心配する必要はないと書きつつ、心配な人へのアドバイスが丁寧に書かれています。家電やスマホなど、個人が使い方を決められるものについては、それぞれが調べて判断するところでしょう。
重要なのは、22,000ボルトの高圧送電線からの電磁界の中で、長年にわたって生活すること。
それも胎児期から。
これが日常の範囲内かどうか、です。
じつは、長期的な影響を考慮した規制は日本には全くないのです。
長期的な影響として、小児白血病について、生物学的メカニズムや動物実験での根拠は見つかっていませんが、0.2〜0.4マイクロテスラ(μT)以上の磁界を浴び続けると、小児白血病の発生率が2倍以上に増加するという統計的な関係が示されています。これはWHOも否定しておらず、研究が進めば生物学的にも根拠が見つかる可能性があります。
スウェーデン、フランス、イタリア、オランダ、スイス、イスラエル、アメリカなど、多くの国で、住宅やこどもの施設の近くではこの数値に近い0.2〜1マイクロテスラ(μT)を個別に規制するルールがあります。日本には全くありません。
この冊子の内容からだけでは、電磁波をどうとらえるべきか判断しにくいものです。
「危ないとは書いてないんでしょ?」という人もいます。
しかし、子どもを持つ親としては、母子手帳と一緒にこの冊子が配られていること、それ自体が「電磁波」という単語を広めるための教育だと感じます。
家族の妊娠がわかったら、産まれてからも、親たちは子どもを守るための教育を絶えず受け続けます。妊娠がわかるまで知らなかったことも山程あります。資料の量は、ズッシリと重く、紙袋を抱えて「これを全部読むのか…」と帰りながら途方に暮れるほどです。感染症、お酒、喫煙、水銀、運動、栄養、放射性物質、発育、発達、アレルギー…その他にもたくさん、こういったものの中に電磁波というキーワードは並んでいます。
小児白血病とがんの他にも、電磁波・電磁界との関連があるかどうか研究されているものがたくさんあります。発達障害や、うつ、精神科系の病気、精子奇形や、ストレスなど、どれも身近でありながらはっきりとは原因がわかっていないものばかりで、どれも根治が難しいものばかりです。遺伝するかもしれないものもあります。
自分の子どもにハンディキャップがあったり、病気を発症したら、親たちは何が原因だったのだろうか、避けられなかったのだろうかと思い悩みます。子どもに影響がなくても、その子どもに影響したら…
不安を感じるものは遠ざけてあげたい。これはとても強い気持ちです。
こちらのブログからも情報をいただいています。